メカニクスを理解する — Remnant: From the Ashes ②
僕は昼飯に定食を食べる時、一番安いのの一個上を選びたがる。店で適当にウイスキーを飲む時、角じゃなくてメーカーズマークを頼みたがる。
初めて遊ぶアクションゲームでは、難易度をノーマルの一つ上にする。
ちょっと良いものを食べたり飲んだりしたい。おれにとって難易度「ハード」というのは、そういうものだ。
さて戦闘のチュートリアルも兼ねた感じのイベント戦が終わり、本格的にキャンペーンがスタートする。
基地からフィールドへ出るゲートがあり、そこから難易度を選び、一連のステージを順に進めていくようだ。
おれはとりあえず難易度をHardに設定する。ちなみに難易度は更に上に二つあり、Hardは下から数えて二番めだ。
フィールドへ出て歩く。さっきまでの基地とは違い、屋外で、空が見える。市街地だ。建物はほとんど壊れ果てており、人の姿は見えない。
けっこう歩く速度が遅いゲームだ。感覚としては「バイオハザード」の歩行くらい。カメラとキャラクターの位置も大体そんな感じだ。つまり、画面に映る範囲は意図的に制限されており、背後を警戒するにはしっかり振り向かなければならない。そして、軽快に走るにはスタミナを消費しなければならない。敵にビビりつつ、しかし一撃で頭を吹っ飛ばす程度の火力はこちらにもある。
そういうバランス。
歩いていると雑魚敵が徘徊しているのが目に入る。
探知されるまえに撃ち抜こうと思ったが、けっこうすぐに気づかれた。
すばやくハンティングライフルを構える。左トリガーでエイムする。射撃。しっかり頭に当たり、百数十のダメージ数値とともに敵は倒れた。
一体がこちらを探知したので、周辺の数体もこちらに向かってくる。脚を撃つ。しっかり転んでくれた。嬉しい。僕は部位破壊というのが大好きである。前に転んでこちらにむき出しの頭にもう一発撃ち込んでやった。
敵が刃物を投擲してくる。ローリングで回避しつつ、距離を詰める。近接攻撃のチャンス。
銃を撃つゲームではあるが、近接攻撃はけっこう範囲が広く怯みがとれて、当然弾薬も消費しないし、威力もまずまずある。というかたいてい、銃を撃つゲームの近接攻撃は、振れる場面では銃を撃つより強いものだから、これも例に漏れず高性能だ。
雑魚敵の群れを初めてさばいた。なんだ、難易度Hardというわりに楽だな。
マンホールが輝いているのが見える。なるほどダンジョンの入り口である。下水道。お約束だ。
下水道に入る。チェックポイントで弾薬等々回復して、先に進む。
下水道というのは古今東西のゲームで不快なエネミーを登場させるためのうってつけのロケーションだ。「ダークソウル」の最下層とか。「メタルスラッグ」なんかでも、そんなステージがあったような気がする。
まあ、なんかやべえのが出てくるんだろうなという予感にビビりながら、下水をかきわけ進む。果たして予感は的中する。
膨れた丸いやつ。ピンク色のマタドガスにずんぐりした短い足が生えていると言えばほとんど伝わるだろう。そいつが叫びながら走り込んでくる。僕は直感した。こいつは自爆する。
対応が間に合わなかったので、闇雲に近接攻撃を振る。そいつは倒せたが、やはり爆発して手痛いダメージと毒的な状態異常のガスを残していった。こうしてこのゲームで初めて死んだ。
リトライはあのチェックポイントから。死亡演出からリスポーンまではかなりスピード感がある。
雑魚に紛れて突っ込んでくる自爆マタドガスに僕は散々苦しめられる。何度も死ぬ。何度も死につつ、徐々に下水道の奥へ奥へと進むことができるようになっていく。
ここで気がつく。なにもあわてるようなゲームではない。自爆野郎も遠くから探知前に撃ち抜けば無害だ。スタミナを消費して走るのなどいっそやめてしまえばよい。のんびり歩きながら、見えた敵を順番に撃っていけばいいではないか。
目論見はうまくいった。未踏の領域へとたどり着く。
なんだ、こういう感じで進めば良いのか。このゲームはそういう感じなのか。
ちょっと肩透かしをくったような気分だ。
すると聞いたことのないSEがヘッドホンから聞こえてきた。
甲高い、金属が擦れるような大きな音。
ゲーム内のオブジェクトがたてる音ではなく、システム的な警告音であると理解した。
何かが来る。
しかし慌てることはない。ゆっくり進めば良いのだ。たまに後ろを警戒しながら。
後ろを振り向く。何かいる。
両手に巨大な刃物を持っている。人型。自爆マタドガスとは全く異なるタイプの脅威であることが一目でわかる。そいつはゆっくりゆっくり歩いて、こちらに近づいてくる。
ライフルを構え、頭目掛けて撃った。
“Resist”の文字。もう一発撃っても同様だ。刃物で弾丸を弾いている。冗談ではない。銃を撃つゲームで、銃に完全な耐性があるとでもいうのか。
致死的な存在であることが明らかになったので、僕はスタミナを消費しつつダッシュを始める。飛び出してくるのはやはり自爆マタドガス。突然現れたそいつの自爆をまともに受ける。
吹き飛び転ぶと、さっきの致死的な存在が目の前にいる。ええいままよと近接攻撃を試みる。なんかダメージが入ったかどうかもわからない。わからないまま死んだ。
僕は理解した。ゆっくり歩いていると、あいつが迫ってくる。あいつは僕がチェックポイントを出て、歩き始めて、どこかの時点で僕の遠く背後にスポーンし、ゆっくり迫ってくる。自爆マタドガスにびびっていると、あいつに追い付かれる。
つまりこうだ。すばやく走り、自爆マタドガスをテンポ良く処理しつつ、この下水道を抜ける必要がある。
僕は戦術をそのように変えて、ダッシュと回避、射撃、を織り交ぜる。
時折スタミナ回復のために立ち止まり、不意に遭遇した自爆マタドガス以外の雑魚は近接攻撃で処理した。
走る。敵が見える。撃つ。敵の足が止まる。もう一発入れる。背後を見る。別の敵。マガジンの残弾が少ない。攻撃を回避しつつ懐に潜り込み、近接攻撃を振る。また走り出す。
例の金属音が鳴る。“やつ”が迫っているらしい。早く、確実に敵を処理しながら進む……
下水道の出口に辿り着いた。
僕はこのゲームの面白さをようやく理解する。
すばやく走りつつ、全体的にコンパクトな射撃で敵を処理する。残弾数も気にしながら、近接攻撃も使う。ローリング回避からシームレスにエイムモーションがつながるので、回避、即、銃を構えて撃つこともできる。
そういうふうにエリアを抜けていくのが楽しいのだ。これはそういうゲームだ。
ゲームメカニクスの楽しさはそれで十分なのだが、ずっと陰気なだけのビジュアルはなんとかしてほしいなあなどと思う。
どこもかしこもくすんだ赤と茶色な感じで、BGMもあんまり。ただ、メカニクスの楽しさはよくわかったので、もうしばらく遊んでみることにする。